混物語 第終話「まごころフィニッシャー」 003

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人が死んでいるのに面白おかしいと表現するのは、日本でなら不謹慎だとお𠮟りを受けるところだが、たとえ自由の国でも、別に言っていいってわけじゃない──ただ、そう言いたくなるほど現実味のない、絵空事のような事件だったのだ。

訓練生(とも言えない、曖昧な立場)の僕は、当然、正式な捜査に嚙んでいるわけではないのだけれど、それでも、嫌でも、事件の概要が入ってくるくらい、奇妙奇天烈な出来事である。

まあ、十四人の被害者が全員連続殺人犯という時点で、既に笑えないブラックジョークみたいなものなのだけれど、たとえ彼ら彼女らが罪のない善良なる一般市民だったとしても、わざわざ言葉で飾る必要が皆無なセンセーショナル具合は、毫ほども揺らぐことはない。

恥ずかしい話、僕は臥煙さんの紹介(陰謀)で渡米するまで、海外ドラマでよく聞くところのFBIがどういう機関なのかよく知らなかったのだけれど(架空の機関かと思っていたくらいだ)、国土面積の広大なアメリカ合衆国において、主に広域捜査を担当する警察機構なのだそうだ──そういう意味では、この連続殺人犯連続殺人事件なんて、まるでFBIに捜査されるための事件だと言っても過言でも、そして不謹慎でもない。

なにせ犯罪発生地域が、全国に亘る。

島国出身の僕には、そう言われても今ひとつ実感しにくいものがあったけれど、北米大陸どころか、犯罪発生地域がハワイ州にまで及ぶというのだから、ただごとではない。

指名手配中の凶悪な連続殺人犯が、アメリカ各地、各州で殺された──これは、そういう殺人事件である。

ひとり目の連続殺人犯は、イリノイ州シカゴにて。

ふたり目の連続殺人犯は、ニューヨーク州マンハッタン島にて。

三人目の連続殺人犯は、カリフォルニア州サンフランシスコにて。

四人目の連続殺人犯は、コロラド州デンバーにて。

以下、五人目はフロリダ州オーランドにて、六人目はアーカンソー州ホットスプリングスにて、七人目はテネシー州ナッシュビルにて、八人目はハワイ州ビッグアイランドにて、九人目はテキサス州ダラスにて、十人目はルイジアナ州ニューオーリンズにて、十一人目はアイダホ州ボイジーにて、十二人目はアラバマ州モントゴメリーにて、十三人目はウィスコンシン州ミルウォーキーにて、十四人目はアラスカ州フェアバンクスにて──と続く。

続く。

そう、解決したわけではない以上、まだ続いていると言っていい──そういう意味では、『連続殺人事件』の表記も間違っているとは言えないけれども、しかし、この『ひとり目』『ふたり目』~『十三人目』『十四人目』という数えかたについては、注釈を加えておく必要があるだろう。

つまり、これは『発見順』であって、必ずしも『殺害順』ではない。

アラスカ州とハワイ州を加えて、計六つのタイムゾーンを持つこの国で、時刻をどのように記載するかは悩みどころではあるけれど、便宜的に世界標準時を採用するとして──『死体発見時刻』はまちまちでバラバラだったが、肝心の『死亡推定時刻』は、ほぼ同時刻だったのである。

この場合、『ほぼ』というのは監察医の謙遜であり、『凶器』や『殺しかた』が同一なのと同じくらい、十四人の連続殺人犯の『死亡推定時刻』は、同一らしい。

同一どころか。

統一されていると言ってもいいくらい。

さて、つまりここで問題だ──南はハワイ州から北はアラスカ州まで、東はニューヨークから西はサンフランシスコまで。

各地に潜伏していた十四人の連続殺人犯を、犯人は一体どうやって、統一時刻に殺害せしめたというのでしょう?